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所得税の最高税率は45%…という表記方法はズルい!住民税を含め、所得にかかる税金はすべて所得税という名称で統一すべきです。

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外貨と計算機を映した画像

今回は雑談がてら、常日頃から抱えている所得税の表記方法に関する不満を書いてみたいと思います。

まず2022年現在、所得税の最高税率は45%です。2015年に税制が改正となり、従来の最高税率40%から45%に増額となりました。

こう聞くと、まぁ普通の方なら『ふーん、所得税って最高でもそんなものなんだ。50%以下だから、もう少し税率をあげても良いんじゃない?』なんて感想を持つことが多いと思うんですよね。

事実、45%という数字は半分に届かない中途半端な数字なので、いっそのこと50%にしちゃえと思う方のほうが多いのではないでしょうか?

最新の税率表は下記の通りとなります(国税庁から引用)。

課税される所得金額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円を超え 330万円以下 10% 97,500円
330万円を超え 695万円以下 20% 427,500円
695万円を超え 900万円以下 23% 636,000円
900万円を超え 1,800万円以下 33% 1,536,000円
1,800万を超え 4,000万円以下 40% 2,796,000円
4,000万円超 45% 4,796,000円

所得税の最高税率について:

住民税を加えると最高税率は50%以上:

しかし、稼いだお金に対してかかる税金は、なにも所得税だけではありません。

所得に応じて住民税という税金もしっかり課税されるため、所得税に住民税10%を加えた税率こそが『本当の所得税』だと私は思うのです。

  • 本当の所得税=所得税+住民税

つまり、感覚的には下記の表のほうが所得税の実態に近いはずなので、わざわざ住民税10%分を除いた数字で議論をする意味がわかりません(税金の使われ方が違うのはわかりますが、どちらも所得に対してかかる税金です)。

課税される所得金額 税率
195万円以下 15%
195万円を超え 330万円以下 20%
330万円を超え 695万円以下 30%
695万円を超え 900万円以下 33%
900万円を超え 1,800万円以下 43%
1,800万円超え 4,000万円以下 50%
4,000万円超え 55%

意外と取られている所得税+住民税:

この際、みなさんも是非、前述の表に自分の年収を当てはめてみて、どのくらいの税金を取られているのかを確認してみてください。たぶん所得税だけを見た場合よりも、かなり多いなーという印象を受けるはず。

たとえば課税所得が330万円を超えている方の場合には所得税と住民税で30%もの税金を払っていることになるわけですから、『ほとんど税金で引かれてるじゃん!』と思う方も多いことでしょう。

  • 課税所得330万以上の方:330万円以上の部分に30%課税されている
  • 課税所得900万円以上の方:900万円以上の部分に43%課税されている

課税所得330万円以上の方が税率30%になるのは、課税所得が330万円を超えた部分のみです(例:課税所得400万円なら、330万円を超えた70万円の部分に30%の税金がかかる)。

課税が50%を超えるのはだいたい年収1億円から:

所得税は所得があがっていくにつれて課税が強まっていく「累進課税制度」が採用された税金のため、いくら課税所得4,000万円の方でもその55%が税金で持っていかれるわけではありません(あくまで4,000万円以上を稼いだ分に対して55%が課税される)。

それゆえ、実際に所得税+住民税が50%以上になるのは年収1億円あたりから。

  • 年収1億円未満:税金で半分はもっていかれない
  • 年収1億円以上:税金で半分以上をもっていかれる

それ以上を働いて稼いでいる人は徐々に比率が高まっていき、最終的に55%に近い金額を税金として納税する形となります。

新聞社の記事などを参考までに紹介:

日本経済新聞と朝日新聞の画像

参考までに2011年当時、各新聞社がどんなふうに所得税の増税について紹介しているのかをピックアップ。

まずは住民税に一切触れずに、所得税率のことだけが書いてある記事等を引用してみます。

所得税は現在、課税対象となる所得が1800万円を超える部分に、40%の最高税率が適用されている。25年度改正では、課税所得が数千万円を超える人向けに新たな税率区分を作る。

所得税の最高税率は現行の40%から45%に引き上げ、適用する課税所得を「4千万円超」の部分とする方向だ。

政府税制調査会は21日の会合で、所得税の最高税率をいまの40%から45%に上げることで一致した。年内をめどにまとめる社会保障と税の一体改革の素案に盛り込み、消費増税にあわせて実施したい考えだ。

消費増税は、低所得者ほど負担感が強くなる「逆進性」をもつ。高所得者の負担を増やすことで、不公平感を和らげるのがねらい。

所得税の富裕層増税をめぐっては、昨年の消費税法に関する3党協議で結論が先送りされた。

民主党は所得5千万円超の税率を45%に引き上げる案を主張したのに対し、自民党は慎重姿勢を示した。

公明党は逆に所得3千万円超を45%、所得5千万円超を50%とすべきだと民主党案より厳しくすることを求めたため、3党間で折り合いがつかなかった。

自民、公明、民主の3党は21日、2013年税制改正で所得税の最高税率を現行の40%から45%に引き上げ、課税所得「4000万円超」の部分に当てはめることなどを議論した。

これを受け13年度改正の焦点だった所得税と相続税の富裕層増税が22日にも決着。24日に策定する税制改正大綱に盛り込み、15年1月から実施する。

格差の是正及び所得再分配機能の回復の観点から、現行の所得税の税率構造に加えて、課税所得4,000万円超について、45%の税率を設けます。

これらの記事や情報内には一切、住民税に関する記述なし。

それゆえ、税金に詳しくない方からすると、所得税率だけを見て税金の多寡(多いか少ないか)を考えてしまってもおかしくないと思います。

住民税の記述まできちんとある記事:

次に住民税の記述まできちんとしてある記事も紹介しておきます。

その所得税だが、最高税率が40%から45%に引き上げられる。具体的には、現行制度では課税所得が1800万円超の場合、所得税の税率は一律40%だ。

これが15年以降は、新たに課税所得金額4000万円超という区分が設けられ、ここに課される税率は45%となる。

住民税の所得に対する税率は一律10%であるため、所得税の税率と個人住民税の税率を単純に足すと55%になる計算だ。

こちらのほうが圧倒的にわかりやすいと思うんですが、こういった住民税まで加えた税率を書いているメディアはこのプレジデントやオールアバウトなどだけでした。

それにも関わらず、大手新聞社は一様に『敢えて住民税に触れない書き方』をしているんじゃないかな?と思えたほど

  • 所得税の最高税率は45%:まだ高くないと感じる
  • 所得税+住民税が最高税率55%:結構高いなと感じる

もっと税収を増やしていきたい財務省に気を使っているのか、それとも住民税の存在は触れないように通達が出ているのかはわかりませんが、所得税+住民税合算で50%以上かかることをもっと周知してほしいなと思うばかりです。

配当金は税率が低いという勘違いも:

税金に対する誤解で非常に多いのが、『孫正義や三木谷浩史は配当金としてお金をたくさん貰ってるから税率が低い』というものですが、これはまったくの間違い。

実際には大株主への配当金は分離課税ではなく総合課税になってしまうため、彼らが得た配当金のうち55%は、所得税+住民税として国に持っていかれてしまっています(詳しくは下記記事も参照)。

この辺、勘違いすると『金持ちは税率が低くてずるい!』とか、『金持ちはもっと納税しろ!』なんてお門違いな批判をしてしまうだけ。

金持ちだってちゃんと納税しているのですから、むしろ感謝&称賛しましょう。

所得にかかる税金は全て所得税にしてほしい:

JR新橋駅を歩く社会人の写真

このように住民税は住民税としての使われ方があるのでしょうが、個人的には所得に一定割合かかる税金は全て、所得税という名称で統一してほしいなと思う私。

なにせ普通に考えれば、所得税のみが所得にかかる税金。

住民税を別枠にしてしまうからこそ、『合計でどのくらいの税金がかかるのか?』ということがわかりにくいのです。

  • 所得税のみを議論:税率がわかりにくい
  • 所得税+住民税で議論:税率がわかりやすい

そうではなく住民税は所得税名目で徴収してその後、分配する方式を採用してほしいものですね。

これなら所得税率がいかに高いかということが多くの方にとってわかりやすいので、税率が高い低いの議論も平等に行われるようになると私は思います*1

以上、所得税の最高税率は45%…という表記方法はズルい!住民税を含め、所得にかかる税金はすべて所得税という名称で統一してほしいです…という話題でした。みなさんも是非、所得に対してどのくらいの税金を払っているのか確認してみてくださいね。

ほんと所得税のみを計算しても意味がありませんよ。

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お金にもっと詳しくなりたい方は、下記のまとめ記事も参考にどうぞ。経済や金融がわかる入門書を中心に紹介しています。

news.cardmics.com

*1:実際には住民税率は自治体が自由に決められる裁量があるなど、複雑な理由がある点も理解した上での意見です。

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